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契約書基礎知識

契約交渉のポイント

ポイント1:ベンチャーだから交渉力が弱いと自己暗示をかけてしまう

大企業は資本力があり、ベンチャー企業にとっては生死をかける重要な契約も、相手の大企業にとっては全体の売上予算のほんの一部でしかないプロジェクトの場合もあります。さらには、大企業には法務部も整備されており、法務のプロが交渉に出てきます。
そういうことを考えると、ベンチャー企業は非常に交渉力が脆弱と思えてきてしまいます。
そのため、ベンチャー企業だから交渉力が弱いと自己暗示をかけてしまい、それがさらに交渉力を弱めてしまうケースがあります。

契約不成立の場合に、相手の交渉担当者の首が飛ぶなら、相手は強くNOという状況になく、ベンチャー企業にとって交渉力はかなり高い状況です。もし、それが分かれば、ベンチャー企業としても、それを踏まえて有利な交渉を仕掛けることができます。

そのため、交渉にあたっては、市場環境、相手の会社の状況、その会社における交渉相手の部署の位置づけ、担当者の立場などの情報収集と分析が重要になります。

また、契約交渉の過程の中で、相手におけるこの契約の重要性や相手が特に重要視している部分など、次第に相手の状況が分かってくることもあります。
そのため、契約交渉中も、常に情報収集&分析が重要になってきます。

従って、契約交渉にあたっては、焦点となっている条項以外の点についても、
「そういえば、この点貴社ではどうなっていますか?」
などと探りを入れて、情報を収集することも重要です。

特に、交渉途中の「休憩時間」の雑談は重要な場合もあります。
休憩時間は、相手も気を緩めていることも多く、その雑談の中で、
「これは社長命令で絶対成功させろと言われているので、大変です。うまく進めたいですね。」
などと、ポロポロと交渉上役に立つ情報が出てくることもあります。

そのような情報は、すかさず脳のメモリーに記憶させましょう。
表面上はくつろいでいても、常に真剣勝負です。
契約交渉が煮詰まったら休憩時間にしてみてはいかがですか。

ポイント2:時間切れサイン

ベンチャー企業の契約交渉の失敗で、よくあるケースの一つに、「交渉時間が全く足りない」というケースがあります。

タイムスケジュール上では、仮に契約書をチェックして、問題点が分かったとしても、交渉する時間的余裕がなく、契約不成立を避けなければならないベンチャー企業側は、「時間切れサイン(契約締結)」をせざるを得なくなります。なぜこうなってしまったのかと理由を聞くと、相手企業からドラフトが来るまで単純に待ってしまい、貴重な交渉時間を失ってしまっていることがあまりに多いのです。

契約交渉をせずに丸ごと飲ませてしまいたい相手方にとっては、ドラフトを早く出すべきモチベーションはありません。
「法務チェックがまだ終わっていないのです。」「稟議がまだなのです。」とのらりくらりと対応しているだけで、交渉時間が無くなって有利になります。

相手方が故意にそのような対応をしておらず、本当に事務手続が遅いだけだとしても、ベンチャー企業側にとっては交渉時間がなくなりその分不利になってしまう事実に変わりはありません。

そのため、ベンチャー企業側としては、とにかく早く契約ドラフトを出すべく催促することはとても重要です。また、そもそも重要な契約においては、一般的には自分の側でドラフトをした方が有利になることが多いです。こちらでドラフトしたものであれば、引っ掛け問題のように思わぬ不利な条項が入っていることはないですし、最初はこちらの主張通りの内容を提示できます。さらに、こちらからのドラフト提示により交渉を早く開始することできます。

そのため、重要な契約であれば、自社の側でドラフトを作成した方が好ましいです。

ベンチャー企業の場合、「ドラフトを作成するのは大変そうだ。相手から出してもらった方が楽だし、コストが安く済みそう。」など考えて、相手からのドラフト提示を待ってしまうケースも多く、上記のような「時間切れサイン」の一因にもなっています。

そのため、このような安易な考えでは、契約の交渉力を大きく低下させる可能性があることを認識し、自社でドラフトを作成して、契約交渉を早めに開始することを検討することも大事です。

ポイント3:「稟議の問題があるので」というマジックワードに惑わされる

大企業を相手に契約交渉をしていると「この条項は稟議で通らないのです。」と言われて拒絶されることがよくあります。
「稟議」などというものは、単なる企業内の承認フローに過ぎず、状況の分からない人がさっとみて「なにこれ?これは受けられないでしょ。」と軽く却下している例も多くあります。

そもそも、「稟議」とは「○○部の部長」「法務部長」「担当取締役」「社長」など何段階かの稟議のフローのどこかの特定の「人」を意味しているに過ぎません。

その「人」は当然自社の利益の最大化を考えているのであって、むしろ契約交渉の窓口をしている担当者よりもエゴが強いことが多いです。

そのため、「稟議が・・・」と言われたら、それが「誰なのか」ときちんと明確に聞き返し、その「人」への対応策を検討して突破を図る必要があります。状況をよく理解していない人が却下している可能性もあるため、場合によっては、その「人」に直接面談して説明させてもらうように依頼してみることも重要です。特に技術系の起業家や学生起業家の場合、「自分は法務系は得意でないし。そういうものかな。」などと思ってしまいがちですが、意外に「そういうもの」など存在しないことも多いです。

疑問に思ったら率直に「そういうものなのですか?」と顧問弁護士等に気軽に相談してみた方が良いです。

契約交渉の際、先方の情報は契約が成立するまで怠ることなく収集することが重要です。
自身の固定概念により「難しい」と思っていることが実はそんなに困難なことではないことも多くあるので、わからない部分については顧問弁護士等に気軽に相談してみたほうが良いでしょう。
2016/04/18執筆
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