雇用契約書
利用シーン
会社が従業員を採用する際に労働条件を明確にする場合。
作成上の留意点
作成にあたっては特に以下の点にご留意ください。
(1) 重要な労働条件に関する約定の明確化
使用者が労働者を採用するときは、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。特に下記に関する事項については書面で明示する必要があるためあらかじめご確認下さい。
① 労働契約の期間(期間の定めのある労働契約を更新する可能性がある場合は、更新する基準に関する事項)
② 就業の場所・従事する業務に関する事項
③ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
④ 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項
⑤ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
(2) フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社又は退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分け、出社、退社の時刻を労働者の決定に委ねるものです。なお、コアタイムは必ず設けなければならないものではありません。
フレックスタイム制を適用するためには、(ⅰ)就業規則その他これに準ずるものにより、始業および就業の時刻を労働者の決定に委ねるものと定めること、及び、(ⅱ)労使協定により所定の事項について定めている必要があります。
(3) 裁量労働制
裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある一定の業務に携わる労働者について、実労働時間ではなく、あらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
裁量労働制を適用するためには、原則として(ⅰ)当該事業場の過半数組合、若しくは過半数組合がない場合に過半数代表者との書面による協定により所定の事項について定めた上で、(ⅱ)所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。
(4) 定額残業代
基本給に時間外手当相当額を含むとした場合も、規定の時間外手当相当額をさらに超過した時間外労働に対しては、超過部分の割増賃金を支給する必要があります。
(5) 代替休暇制度
特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与えることを目的として、月60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、改正労働基準法(平成22年4月1日施行)による引き上げ分(125%から150%への引上げ分=25%)の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇を与えることができる制度です。
代替休暇制度を導入するためには、所定の事項について労使協定を締結する必要があります。
なお、中小企業主の事業については、当分の間、法定割増賃金率の引上げの適用を猶予することとされています。中小企業でも、適用を猶予されている規定の趣旨にのっとり、例えば1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を150%以上に引き上げた場合は、大企業と同様の代替休暇に相当する制度の導入が可能ですが、一般的に中小企業が、適用を猶予されている法定割増賃金率を150%以上に引き上げるケースは少ないため、本雇用契約書作成にあたって、中小企業主を選択した場合には、代替休暇制度は適用されない仕様となっていますのでご留意下さい。
(6) 定年制
定年が65歳未満である場合には、就業規則に継続雇用についての規定を設ける必要があります。なお、平成25年3月31日までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めている場合、一定限度で当該基準を継続使用できる経過措置があります。
(7) 秘密保持
秘密保持義務については、個別の事案によっては、秘密保持の対象が過度に広範であるなど内容があまりに不合理と考えられる場合には、公序良俗違反として無効とされる場合もあるため、秘密保持の規定を入れる場合でも100%の有効性が保証されるものではない点、ご留意下さい。
(8) 競業避止
競業避止義務の規定は、憲法第22条第1項で保障されている職業選択の自由及び営業の自由を制限することから、競業制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償措置の有無などの観点から、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合には、公序良俗違反として無効とされる場合もあるため、競業避止義務の規定を入れる場合でも100%の有効性が保証されるものではない点、ご留意下さい。