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契約書基礎知識

今すぐ使える契約書修正のテクニック

「この規定、こっちに不利だから修正したいけど・・・」と思っても、契約書に慣れていないと、どんな感じで修正したら良いのか分からないという話は良く聞きます。

そこで、簡単に出来て、且つ、それなりに効果のある契約書の修正テクニックを紹介します。

(1) 賠償額に上限を定める

乙が、乙の故意又は過失により、甲に損害を及ぼした場合には、乙はその損害を賠償する責任を負う。

故意又は過失によって相手方に損害を与えた場合には、損害を賠償しなければならないという規定で、これ自体不合理なものではありませんね。しかし、実際問題として、資金に余裕のないベンチャーとしては、青天井で賠償義務を負うのは難しいため、下記のような形で万が一に備えを試みましょう!

「甲及び乙は、故意又は過失により、相手方に損害を及ぼした場合には、その損害を賠償する責任を負う。但し、本契約についての乙の賠償責任は、損害賠償の事由が発生した時点から遡って過去ヶ月間に本契約に基づき乙が甲から現実に受領した対価の総額を上限とする。

但書を加えるだけのシンプルな修正ですが、効果は抜群にあります。

但し、気をつけなければならないのは、この修正を提案した場合、

「甲及び乙は、故意又は過失により、相手方に損害を及ぼした場合には、その損害を賠償する責任を負う。但し、本契約についての甲及び乙の賠償責任(本条に基づくものを含むがこれに限られない。)は、損害賠償の事由が発生した時点から遡って過去●ヶ月間に本契約に基づき乙が甲から現実に受領した対価の総額を上限とする。」

と、平等な内容で再提案されるケースがほとんどです。

従って、予めそのような内容の再提案が来ても問題ないかを考えておきましょう。

例えば、業務委託契約では、受託者側が委託者側に対して賠償義務を負う可能性の方が、委託者側が受託者側に対して賠償義務を負う可能性より高いので(委託者側は基本的にお金を払う以外の義務は負っていないからです。)、あなたが受託者側であれば、平等な内容でも上限を定めた方が良いということになります。

(2) 義務を努力義務に変えるand努力義務を義務に変える

乙は、エンドユーザーが甲の権利を侵害することを防止しなければならない。

契約書上は上記のようなあなたの義務を定める規定が多く出てきますが、先方のドラフトには、100%実現を確約することが難しい規定が定められることも珍しくありません。

そのような場合には、

「乙は、エンドユーザーが甲の権利を侵害することを防止するよう努めなければならない。」又は「乙は、エンドユーザーが甲の権利を侵害することを防止するための努力をしなければならない。」

と修正する方法があります。

「努める」又は「努力」という言葉を使うことにより、結果的にエンドユーザーが甲の権利を侵害してしまった場合でも、直ちに契約違反とはならないことになります。反対に甲にやってもらわなければ困る事項に「努める」又は「努力」という言葉が使われていた場合には、「しなければならない。」「するものとする。」などの語尾に変換すればOKです。

(3) 「合理的な」という言葉を追加する

乙は、本契約に基づく業務を履行するにあたっては、甲の指示に従わなければならない。

業務委託契約等においては、上記のような文言が入っているケースが多く見受けられますが、依頼者とはいえ、無条件に指示に従わなければならない契約書の記載がある場合には、

「乙は、本契約に基づく業務を履行するにあたっては、甲の合理的な指示に従わなければならない。」

などと追加することが考えられます。

(4) 平等な内容にする

乙は、甲の秘密情報を、甲の事前の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。

相手方から提出される契約書の雛型は、基本的には相手方に有利な内容となっているため、上記のように、あなたが一方的に義務を負う内容となっているケースも少なくありません。

そのような場合には、

甲及び乙は、相手方の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。」

と直すことが考えられます。

「乙」を「甲及び乙」と、「甲」を「相手方」と修正するテクニックは割と汎用性がありますので、是非使ってみて下さい。

(5) 「知る限り」という言葉を挿入する

乙は、本契約締結日現在、第三者の特許権、実用新案権、商標権、意匠権、著作権その他の知的財産権を侵害していない。

資金調達の場合に締結する投資契約には、第三者の知的財産権を侵害していないことについての表明保証条項が定められることが一般的です。

一見至極まっとうな内容にも思えますが、あらゆる特許等の内容を確認するのは困難だと思われますので、

「乙は、乙の知る限り、本契約締結日現在、第三者の特許権、実用新案権、商標権、意匠権、著作権その他の知的財産権を侵害していない。」

と修正し、権利侵害が判明した場合でも、あなたがそのことを知らなければ表明保証違反とはならないように対策をしておきましょう。

契約書を修正する際は、上記5つの点に着目するようにしましょう。
不利な規定を単に削除するのではなく、有利に「修正」した方が交渉が早く円滑に進むケースも多いです。
2016/04/18執筆
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